日本企業が英語圏の越境ECで成功するにはどうすればいいのか?
この記事では、
1. 越境ECの「成功」の定義
2. 越境ECの3形態
3. 越境ECのブランディングに必要な3要素
を説明したいと思います。
1. 越境ECの「成功」の定義
「越境ECは成功しない」
「越境ECは一時期盛り上がったけど…」
という記事か動画を見たことがあります。
確かに、「越境EC」という言葉が出来たのは2014年頃で、2016年に大きく盛り上がって、この2年間は横ばいのようです。

でも、「越境ECは成功しない」という言説には私は首をかしげてしまいます。
なぜなら、「起業は成功しない」「新規事業は成功しない」と言っているのと同じだからです。新規事業は失敗するのが当たり前です。大事なのは、時間や経済的資源を使い、速く小さい失敗を重ねることです。その先に成功の道筋が見えてきます。
越境ECは成功しないのか?
私自身の7年間のEC事業経営者としての経験からも、越境ECは「低リスクの海外起業」だと私は考えています。
日本企業が越境ECを始めようという場合、はモノや供給体制は整っている場合がほとんどで、初期投資が必要な商品開発や設備投資などは済んでいるため、需要をどう広げるかの事業展開になります。
海外の現地顧客ニーズを掘り起こし、それが届くようマーケティング活動を行います。その結果、ニーズに合った商品やブランドを作れれば、事業は必ず成長します。
越境ECは低リスクとはいえ、多くの失敗を経験します。しかし、それは成功へのプロセスです。途中で辞めると『失敗』になりますが、続ければ必ず成功へとつながります。
2. 越境ECの3形態
そして、越境ECの形態は大きく3つあります。
①越境ECエントリー型
海外市場で試行的に販売している形態。事業と物流拠点は、あくまで日本にある。時差がある地域である程度数量が出ていれば、カスタマーサポートくらいは現地にいる企業さんもあるかと思います。この形態の特徴は、海外事業にかかる費用も収益も小さいこと。
次の形態2、形態3に移行する前段階としてこの状態の企業さんも多いかと思います。

②「日本+アルファ」型
現地の物流拠点やカスタマーサポートを持つくらいの収益レベルを安定的に保持している越境ECの形態です。

あくまで日本本社が司令塔となって戦略立案や広報企画などのオペレーションを行いつつ、現地費用が現地収益で賄うことができるレベルで市場開拓が進んでいる状態です。一つの越境ECの完成形として考えるべきだと思います。
③海外展開型
現地法人を統括するカントリーマネージャーがいる、または実店舗があるのが特徴です。いわゆる『海外支店』ができた状態で、越境ECの最終形態と言えます。

ご自身の越境ECはどの形態を目指されるのかによって、「成功」の定義が変わってくるので、どこを目指されたいのかを考えてみるのをお勧めします。
その上で、自分の事業の現在地を確認して、以下の内容を参考に戦略を立ててみてください。
3. 越境ECのブランディングに必要な3要素
その1:看板商品を1つ決める
看板商品はありますか?もしまだ無いなら、ブランドを象徴する特徴を持つ看板商品を選ぶことで、マーケティングコスト効率が格段に上がります。
マーケティングが上手な会社は、軒並み看板商品を持っています。

例えば、AppleのiPhone、ChanelのシャネルのNo.5、HermesのBirkinバッグ、NikeのAir Jordan。
なぜか?
ブランドを覚えてもらいやすいからです。
情報方の時代において、ターゲット顧客に認知してもらうためには、発信する情報の頻度と同じくらい「シンプルさ」が重要です。
現代人の集中継続時間は2000年は12秒間だったのですが、2024年には8.25秒に。(金魚が9秒間らしいので現代人は金魚に負けています…)
要するに、一瞬でブランドを認知してもらう必要があるのです。
その最短距離が看板商品です。ブランドが知られていない状態で複数の商品を見せても、消費者の記憶には残りづらいからです。
越境ECのブランディングに必要な要素のその2:独自性
ご自身のブランドの他のブランドや商品にはない、独自性はなんでしょうか。
どのブランドにも必ずあります。なぜなら、創業者の方の生い立ちや事業への思いが全く同じということはあり得ないからです。
独自性を出すポイントは?
機能面では同じスマートフォンでも、
- 洗練されたデザインが圧倒的人気のAppleのiPhone
- カメラとオーディオ性能に強みがあるSONY Xperia
- Androidの最新機能をいち早く利用できるGoogle Pixel
など、それぞれのブランド・商品ならではの強みを出しています。チャット・電話・アプリが使えるなど基本機能面では大差はありませんが、それ以外の要素で唯一無二の特性を打ち出すことに成功しています。
現代のECはモノを売っているのではなく、モノを通して「体験」を売っています。
顧客に提供したい体験を言語化することで、ブランドの独自性を作ることが出来ます。
このように、EC事業がブランド価値を高めていくためには、看板商品と一緒にブランドの唯一無二の価値観をセットに打ち出すことで、その世界観に魅せられるファンを作っていく過程が必要になります。
ブランドの「唯一無二」感は市場と共に進化する
なお、この唯一無二感の見せ方は立ち上げ時に決めて終わるものではなくて、顧客や市場の反応によって変えていくものです。特に最初の1-2年は売りながら作り上げていく流動的なものです。
例えば、ダイソンの掃除機は日本市場に参入した初期は
「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」
というコピーでした。

今は、
「他のどの掃除機よりも確実にゴミを吸い取ります」
に変わっています。
その理由は、ダイソンの成功により、類似製品が増加したという市場環境の変化にあります。
このように、市場の反応を見ながら「唯一無二」の伝え方は変えていくものになります。
越境ECのブランディングに必要な要素その3:ブランディング活動のシステム化
ブランド価値を高めて市場に知ってもらうためには、ブランディング活動のシステム化が必要です。ここで言うシステム化とは、必ずしもIT化ではなく、事業活動として漏れなく継続的にできるよう仕組み化するという意味です。システム化するべき最も重要な項目を4つご紹介します。
A.レビュー集め
最初の数ヶ月で一番大事な目標です。25個以下だと70%の人が買わないという統計があるので、まずは25個のレビューを集めることを最優先にしましょう。
B. SNS発信
フォロー数と売上は必ずしも比例しないという言説があります。私自身の事業経験からも、ブランドへのフォロワー数が多ければ売上規模も大きくなる傾向はありますが、フォロワーの質にもよるので直結するものではありません。ECブランドにとってのSNS発信はフォロワー集めが目的ではなく、ブランドと商品の認知を繰り返し伝え続けるCMのような存在です。目にする回数が多いほど、心理学的に購入する確率が高まる傾向があります。その回数を増やす一つの手段としてSNSは有効なのです。定期的に更新するのが売上に繋がるのも「このブランドはまだ生きている、事業継続している」ことを顧客が確認するにはSNSが一番手っ取り早いからです。
「英語SNSを始めたいけれど、どこから始めたら良いのか分からない」という方は、2025年英語SNSグローバル展開ガイドを無料で提供しています。英語ができない方でも始められる方法を記載していますので参考になさってみてください。
*7年間複数のSNSアカウントを運用した経験からのアドバイス:SNSアルゴリズムに好かれるためには、更新する曜日と時間を固定して、それを遵守してみてください。アルゴリズムに信用されるために3〜6ヶ月はかかりますが、バラバラに更新するよりも遥かにリーチ数(配信内容が見られる数)が伸びやすい傾向があります。
C. SEO対策
きちんと対策するのは専門的なツールや知見が必要な領域ですが、SEOはSNS発信と同じように無料で集客ができる施策です。
最低限こちらの施策はすることをおすすめします。
・グーグルアナリティクスをインストール。ウェブサイトへの流入経路を記録して現状把握をすることは集客施策の基本です。無料な上に将来的に本格的なSEO対策をする時にも必須のツールですので必ずインストールしてください。
・自分の顧客が検索するであろうキーワードをサイトのホームページやブログのタイトル、最初と最後の段落に使う
D. メールマーケティング
メルマガ登録してくれた人への①ウェルカムメール、②購入者へのお礼メール、③カート放棄メール、④レビュー依頼メールの4点は自動配信されるようにご準備ください。Shopifyの場合はこれらのメール配信が自動化できる機能がついています。
特に、カート放棄メールはカート放棄した人に割引クーポンを提供すれば売上が10%回復するという統計があります。
以上のように、日本企業が越境ECで成功するためには、①看板商品の確立 ②唯一無二感の訴求 ③ブランディング活動のシステム化の3要素が重要です。英語圏の越境ECに進出したいけれど、何をして良いか分からない方や始めたけれど売上が伸び悩んでいる方はこちらの2分の無料診断を受けてみてください。